シアター・グリーン・ブック日本版チーム
Image Nation Greenは、芸術に携わるすべての人たちが、環境に配慮した芸術活動に取り組んでいくことをサポートするため、持続可能な仕組み作りに取り組み、「持続可能な芸術文化活動の促進」「ネットワーキング」「環境リテラシートレーニング」の3つの分野で活動しています。
私たちがシアター・グリーン・ブックを日本に広める活動を始めたのは、気候変動が加速し日本の社会も取り組みを進める中、舞台芸術でも具体的な行動への手がかりが早急に必要だとの思いからです。そしてもう一つは、自ら舞台美術の廃棄の現場に立ち会った際に感じた「自分にできることはないのか」という疑問でした。
Image Nation Greenはシアター・グリーン・ブックの発行元であるイギリスのRenew Cultureと翻訳契約を締結し、日本で唯一の翻訳権を持ち、日本での普及、活用を推進する活動を行っています。
2022年、私たちは「シアター・グリーン・ブック(持続可能な作品制作:簡易版)」の翻訳から活動を始めました。2025年には「シアター・グリーン・ブック(総合編、持続可能な作品制作、持続可能な劇場運営)」 の日本語版を発行。今後は、日本の舞台芸術の実態に即した日本独自のガイドラインの開発を目指します。

大島 広子
Image Nation Green 代表理事
(舞台美術家、グリーンプロダクションコーディネーター)

鈴木 奈津子
Image Nation Green 理事
(広報スペシャリスト)
持続可能な未来のために、舞台芸術ができること——シアター・グリーン・ブックの可能性
世界規模で気候変動が進行する中、日本の社会でも持続可能性に向けたさまざまな取り組みが広がっています。舞台芸術の分野も例外ではなく、環境への配慮と創造性の両立が求められる状況になっています。そうした流れの中で、「シアター・グリーン・ブック」は、舞台芸術に携わるすべての人にとって、持続可能な未来への取り組みを先導し、力強く後押ししてくれる存在です。
すでにこのガイドラインを導入している海外の団体やアーティストからは、環境負荷の低減にとどまらず、コスト削減、チームの連携強化、さらには新たな創造の可能性を実感しているという声が多く寄せられています。シアター・グリーン・ブックは、単なる環境対策の手引きにとどまらず、舞台芸術の創作のあり方そのものを見つめ直すきっかけにもなるでしょう。
日本でも、このガイドラインのもとで、劇場やアーティスト、観客、地域社会との間で新たなネットワークや共通の目標を築くことができれば、より開かれた舞台芸術の未来につながります。また、国際共同制作が活発に行われている現在、日本の舞台芸術が環境への姿勢を明確に示すことは、信頼ある国際パートナーシップの構築にも役立つはずです。
舞台芸術は、社会や文化と深く結びつき、人々の心に訴える力をもっています。その創造性は、環境課題への社会的な関心を喚起し、行動を促すきっかけになります。そのためにもまず、舞台芸術そのものが環境に配慮した、持続可能なものであることは、重要な取り組みの一歩です。
シアター・グリーン・ブックの冒頭には、次のような言葉があります。
『舞台芸術は単独で気候危機を解決することはできないが、気候危機への取り組みにおいて切迫した重要な役割を果たすことはできる。舞台芸術は、人々に疑問を投げかけ、挑戦し、挑発し、楽しませ、驚かせることができる。そして、目も眩むほどの恐ろしい変化の時代に生きる人々の不安を映し出すこともできる。それが、舞台芸術が果たせる役割だ。』
この言葉を受け止め、次の世代に引き継ぐ芸術文化を育むためにも、今こそ、環境への取り組みを共に始めましょう。


シアター・グリーン・ブックとは
シアター・グリーン・ブック(Theatre Green Book)は、舞台関係者と環境の専門家によって作られた、舞台芸術に関する環境配慮のための実践的なガイドラインです。
舞台関係者が持続可能な取り組みを行う意義や方針と、カテゴリーごとの具体的な対策がまとめられています。
「シアター・グリーン・ブック総合編」と、「持続可能な作品制作」「持続可能な運営」「持続可能な建物」の3つの詳細ガイドラインという構成で、オンライン上で無料公開され、どなたでも自由に利用できます。
2021年のイギリスでの発行以来、13ヶ国語※に翻訳され、ロンドンのナショナル・シアターをはじめ、ヨーロッパ各国の劇場で広く活用されています。
(※2025年5月現在)